「お嬢様……」
そして、しばらく間を置いたあと、彼は言った。
「少々おまちくださいませ」
え?
「髪型が乱れてしまいましたので」
え?
髪?
「少々、お時間をいただきます」
そう言うと、彼は、すばやくクシとワックスを取り出した。
そして、テキパキと慣れた手つきで、華麗に髪型を整えていった。
なんだ?
いったいなんなんだ?
私がそう思ったその時、
「あぁ……」
彼が、手鏡に写る自分を見ながらうっとりと言った。
「美しい……」
へ?
「やっぱり、髪型が整っている私はレベルが違う」
あ、あの……
「そう思いませんか、お嬢様?」
あ、いや、だから……
「そう思いますよね、お嬢様?」
い、いや、聞かれても……
「あぁ、美しい……」
こ、この人ってもしかして……
「私より美しいものが、この世に存在するんでしょうか?」
でぇぇぇぇぇぇぇ~~~~!!!!
超ナルシストォォォォォ~~~~~!!!!
な、なんなの!?
この人は!?
う、嘘でしょ!
ちょっ!
こんな人が、私の運命の人なの~~~!?
本当に、運命の人なの~~~!?

