【短編】君の数字




「あ、あの」


私は言った。


「お、お名前は?」

「え……名前?」


彼は、少しの間、うつむき黙りこんだあと、静かに口を開いた。


「お嬢様……私のこと、お分かりになりませんか?」

「へ!?」


あれ!?

もしかして、どこかで会ったことがあるのかな?

いや、ない。

こんなイケメン、忘れるわけがない。


「い、いえ」


私は、すごいスピードで手の平を横に振った。


「今日が初めてだと思います」

「そうですか……」


彼は、髪をフワッとかきあげながら言った。


「すみません、私の勘違いでした。おそらく、前世で出会っていたのかもしれませんね」

「は、はあ……」


うわっ!

なんてキザなことを!

でも、ちょっと待って。

こんなふうに助けられているシチュエーションだと、すごくキュンとくるセリフに聞こえるじゃないの。


「あ、あの、それでお名前は?」

「おっと、すみません。申しおくれました。私の名は……」


名前は……?



「レイです」



レイ――

それが、彼の名前だった。

ブロンドの柔らかい髪。

肩にかかろうかという長さの髪からは、そっといい匂いが漂ってくる。

肌も白くてとても綺麗。

まるで、今降ったばかりの初雪のよう。

そして、瞳が美しい。

まぶたは一重だけど、キリッとした切れ長の目。


かっこいい!

かっこよすぎる!


私はしばらくの間、ポーッと彼の顔を見つめていた。