「悠弦くんこのあと少し時間ある?」 「うん、大丈夫だよ」 ずっと鞄を見ていた目を南くんに向けると、南くんは鞄を持って汐浬ちゃんのほうへ歩いていく。 「あ…、み、南くん…」 その背中に思わず名前を呼んでみたけど、私の小さな声は、まだ教室に残っていた生徒の賑やかな話し声にかき消され、南くんに届かなかった。 「…っ」 …ここで呼び止めたところで、告白なんてできるわけない。 私はただ唇を噛み締めることしかできなかった。