うしろから手首を掴まれて、驚いて振り返る。 そこにいた柔らかい笑顔の高嶋くんと目が合い、不覚にもどきんと胸が鳴った。 少し頭を傾けた高嶋くんが、手首を掴んだまま言う。 「携帯持ってる?」 「……っえ、あっ」 笑顔に気を取られていて、慌ててコートのポケットを探るけど、携帯は部屋に置いてきたことに気づいた。 「ごめん! ちょっと待ってて!」 私は転ばないように恐る恐るの駆け足で家に入った。