汐浬ちゃんはきっと、私が汐浬ちゃんのために南くんの申し出を断ったと思ってお礼を言ったんだよね…。 だから、さっきの『ありがとう』に悪気がないことはすぐにわかった。 汐浬ちゃんは本当に、純粋に南くんを好きなんだ。 悪い人なんかじゃないんだ。 …汐浬ちゃんが良い人だから、逆に苦しい。 悪い人だったら、こんなに苦しくならないよ。 ……南くんだって、優しいよ、優しすぎるよ。 …でも今は、その優しさが痛いよ。苦しい……。 南くんと汐浬ちゃんの後ろ姿は、ゆっくりと遠ざかっていった。