バタンッ！充の声は、出雲が勢いよく閉めたドアの音に掻き消される。

一人車内に取り残された充は、出雲が雑踏の中へと消えてゆく姿を見つめながらぼやいた。

『お前は今日のところはもういい』

「全く、そういう訳には行きませんって
　任されてんすよ」

『女に用があってね』

ここらあたりには、加瀬組傘下の店が多数。

「アキママか、いや、ユウナちゃん
　カホちゃん、それとも
　まさかあの美人さんかぁ？
　
　うーん、邪魔しちゃ悪いが居場所
　だけは突き止めておかないとな

　こりゃ、当分帰れねえな

　あ～、腹減ったぁ

　メイちゃんの晩飯、食いてぇ」

充は車を移動させて、とりあえず店を片っ端から当たってみることにした。

出雲が通る道筋には、主張の激しい店の看板が猥雑な状態で掲げられ視界に飛び込んで来てはチカチカと騒がしく頭痛を誘発する。

視線を下ろし気味に歩く出雲が辿り着いた店の前、ギュッと腕に触れる感触にギロリと相手を睨みつけた。