俺達は、本当の意味での愛を知る----
パタパタパタ……玄関先にぼうっと突っ立ったままの俺に聞こえる、潤司の家の中を走る足音。
「メイちゃん
ママのリンゴ、おいてきたよ」
「ジュン君、先に手洗おうか」
二人の声を聞きながら手に持っている鍵を置こうとある場所を見つめると、そこには物心ついた頃には既に在った木彫りの熊が今も置かれている。
ヒグマが鮭を銜えてる姿。
熊の愛らしい瞳にパクリと魚を銜えている口元。
その姿は俺には、かわいくじゃれ合っているように思えた。
だが、魚にとっては命懸け!
いつ飲みこまれてもおかしくない状況下。
死を真際に魚は脅え、恐怖に震えているかもしれない。
いやっ、覚悟(度胸)を決めて食べられるその時を待っているのかも……
さあ、どっち?
そんなことをふと思いながら、俺は置物の傍らにいつものように鍵を置いた。


