深海魚Lover

靴を脱ぐことも忘れ、ズカズカと一目散に私の元に現れ、私を覆う黒き影。

----その正体は、出雲さん。

貴方は私のこと強く抱きしめて、私の耳元でとっても頼りない声で囁いた。

「じゅん

 ごめんな」

『イズモ、何か言ってよ』

「俺は、逃げてばかりだ」


静けさの中で流れる時間----

「イズモ、さん?

 あの、電気点けましょうか?」

私のことを妹の絢さんだと思って話している出雲さんに間違っているとはとても言えなくて、私は気づくとそう問いかけていた。

出雲さんは私の声を聞いた今でも、私のことを抱きしめる手を解くことはしない。

それよりももっともっと強く抱きしめる。

絢さんではないと知っても尚----どうすれば?

抱きしめられている私、このままではいられないよ。

「点けますね」

「いらない!
 
 わざわざ明るくすんなって」