深海魚Lover

京次の傷痕……

それは、本来ならば出雲の傷痕だった。

だから、それをこうしてあるべき場所に遺す……


『じゅん……』


震える手で触れ、抱きしめ、そっと頬を寄せ

そして……


『ワァーーー』


どれだけの涙が零れるの?


異様な静けさの中に在る、絶望。

それを受け入れるには、時間がかかる。

時間が……


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一方通行の道を通り、車は門の前で停車する。

腕時計を気にしながら降りる、男性。

明かりの灯る建物の前で、インターホンを鳴らす。

「はい」

「すみません、遅くなってしまいました
 井原です」

インターホンから聞こえる女性の高い声。

「イバラさぁん、おかえりなさい♪
 
 ジュン君、今すぐ連れて行きますね」

「はい、お願いします」

京次の元へと、先生に連れられてやって来たのは潤司。