深海魚Lover

待たせてあった車に乗り込んだ四奈川は、煙草を銜えながら楼に言った。

「このままうまくいきそうですね」

「四奈川、これだけは言っておく
 俺は組の行く末などどうなろうが
 知ったことではない
 
 峰のオヤジには借りがある
 だからお前に手を貸す
 ただそれだけのことだ

 この抗争が終われば俺は消える」

「そうですか、それは残念
 勿体ない話ですね
 組に残れば貴方の立場は揺るぎない」

「勘違いするなよ
 お前はまだ何者にもなっていない

 ぼっちゃんを見くびるな」


楼の話に割り込むように鳴った着信音、四奈川はスマホを取り出して相手先を見た。


「峰のオヤジさんから」

「四奈川
 くれぐれもヤツ(出雲)の内に在る
 獣を起こさないようにしろよ」

「はい、御心配には及びませんよ

 もしもし?
 はい、今からロウのアニキと一緒に
 伺わせて頂きます

 アニキ……」