深海魚Lover

「(バカに)しちゃいねえよ
 おまえが言うように俺は腰抜け
 それで結構

 正直、組になど何の魅力も感じねえな

 おまえが命かけて汚い手まで使って
 欲しがる意味が俺にはさっぱり
 わからねえよ」

「何を、おまえ、正気か?」

「ああ……」

「カシラ!!
 
 それ以上はどうか言わないでください
 頼みます」


右田の言葉も空しく、出雲は四奈川を見つめて言った。


「好きにしろや」

「マジで腑抜けた野郎だぜ

 アハハハ
 これはもう笑うしかねえな」


四奈川の脇を通り、その場を後にする自分の背中を組員達が失望の眼差しで見つめているのを痛烈に感じながらも出雲は振り向くことはせず、明るい雑踏の中へと消えてゆく。


「アニキ……」


ただ立ちつくすしかない充に声をかけたのは右田。


「ツル、そうガッカリするな
 
 ほらっ、後の事は任せて
 おまえはカシラの元へ急げ、早く」

「はい!」