私に笊ごと林檎を渡した後、雛田さんはいつものように室内へと入って行く。

「お邪魔します

 それにしても良かったわ
 メイコちゃんみたいに気立ての良い子が
 先生の奥さんになってくれて」

「いえっ!私達はまだ、その……」

「いいのよいいのよ
 細かなことはこの際置いておいて
 あなたがここへ来てからこの家も
 随分と以前のように明るくなったわ
 
 私の心配事も一つ消えて本当に
 よかったよかった

 先生のこと、これからも
 どうぞよろしくね」

「はい」

京次さんとのことを雛田さんに祝福された恥ずかしさに、私の頬は熱くなる。

その頬に触れたくても両手は塞がり中、私はテーブルに笊を置いた。

居間の畳に膝をついた雛田さんは壁時計を見つめた。

「ところで、せっかくだし
 メイコちゃん時間ある?」

「はい」

「そう、なら少しだけ
 おばさんの話に付き合ってくれる?」

「はい、今、お茶淹れますね」