しばらくするとガラガラガラと、いつものように開かれる引き戸。

「メイコさん
 メイコさんは、いらっしゃる?」

「はーい
 あっ、雛田さん、いらっしゃい
 ケイジさんならまだ……」

「いいのよ、先生は……
 
 今日はこれ、頂きものの林檎
 みんなに食べてもらおうと思って
 持って来ただけなの」

京次さんの書道教室に通う生徒さんの一人、雛田さんは笊の中いっぱいに林檎を持って現れた。

「わぁー、照りがあってとっても
 きれいな林檎ですね」

「そうでしょう、味も保証するわよ
 
 なんてたって亡くなったおばあちゃん
 の大好物だった林檎だもの

 ……

 おはぎはもう持って来てあげられなく
 なっちゃったけど、ここの家の人達には
 うちのおばあちゃんが生前、本当に良く
 してもらって
 
 そうだ、ジュンちゃんにもひとつ
 後で供えてあげてちょうだい」

「はい」