だけど結花ちゃんは俺の言葉を否定するように、ふるふると何度も頭を左右に振る。
そして俺の目を涙の溜まった大きな瞳でじっと見て、俺の想像していたのとは違う言葉を口にした。


「私の幸せは私が決める」


今にも涙が零れてしまいそうな脆い表情なのに、結花ちゃんの放った言葉はなぜかとても力強かった。


俺はその言葉に、一瞬、言葉を失った。


か弱そうで儚く見える結花ちゃんのどこにそんな強さが潜んでいたのだろう。


「薫くんは自分のせいで私が嫌がらせされていると思ってそう言ってるの?だったら心配いらないよ。私、負けたりしないから」


俺を見つめたまま、結花ちゃんは強い意志を滲ませてはっきりと言った。


俺は心が揺らぐ。
こんなに強い一面を見せられて、結花ちゃんの言葉にせっかくした別れの決意が崩れそうになる。


だけど、



『アンタのせいで結花は傷ついてる。早く別れてアイツを助けてやれよ。お前にできるのはそれくらいだ』


昨日の倉石くんの言葉が警告音のように、俺の頭の中に甦ってきた。