着替えを済ませてリビングに戻ると、理子ちゃんの相手をしながら母さんと佐知が忙しそうに夕食の準備をしていた。
戻ってきた俺に気付いた理子ちゃんはまたパタパタと走って来て、俺の足にギュッと抱き着いてきた。
……なんだ、この可愛い生き物は。
小さな顔を命いっぱい上げて、クリクリの丸い目で俺を見つめる理子ちゃんに俺の顔は自然と緩む。
理子ちゃんと目線を合わせるように床に座った俺の膝の上に、理子ちゃんがちょこんっと座った。
「ふふっ、理子は薫のことが大好きになったみたいね」
テーブルを拭きながら佐知が嬉しそうに言う。
その言葉が何だかとても嬉しかった。
「薫、理子ちゃんとしばらく遊んでいてちょうだい。私も佐知も夕食の準備で忙しいから」
「え……いいけど」
母さんに言われて膝の上に座る理子ちゃんに視線を落とす。
ニコニコ笑う理子ちゃんは足元に転がっていたウサギのぬいぐるみを拾って、俺に見せてきた。
ふわふわの白いウサギは大きな赤い目をしている。
そのウサギのぬいぐるみを撫でると、なぜか結花ちゃんの笑顔を思い出した。
結花ちゃんはウサギっぽいところがあるからな。
心に浮かんだ結花ちゃんの笑顔に俺は無意識にクスッと笑みが零れた。
「可愛いね。理子ちゃんはウサギ好き?」
そう訊ねた俺に理子ちゃんは「うん」と大きく頷いて、手の中のウサギをギュッと抱き締めた。
ホント、可愛い。
『小さい子って本当に可愛いから、薫くんもきっと姪っ子ちゃんのこと気に入ると思うな』
そう自信満々に言っていた結花ちゃんの声が聞こえた気がした。

