「俺は結花に幸せだと感じてほしい」


「私は十分幸せだよ?」


薫くんの言葉の意味がわからなくて、私は顔を赤くしたままキョトンとした。
薫くんは優しい微笑みを浮かべてまた私の頬を撫でた。


「結花はもっと幸せになれる。これはその一歩だよ」


そう言った薫くんは目の前のリビングのドアを開けた。


「………え?」


薫くんの言葉の意味がやっぱりよくわからない私は薫くんの開けたドアの先にいた思いもよらない人にびっくりして目を見開いた。


リビングの中央。
大きなソファーに座っているその人は、本郷さんだった。


どういうことなのかわからなくて私は固まったようにそこから動けない。
そんな私の背中を薫くんはそっと促すように押して、本郷さんがいるソファーまで連れて行った。


「座って、結花」


呆然と立ち尽くす私を薫くんは優しくソファーに座らせる。
私は状況が呑み込めなくて、包み込むような柔らかなソファーの上で固まったまま目の前に座る本郷さんを見ていた。