「よさそうなのあった?」


そう重ねて訊ねれば、結花ちゃんは赤い顔であたふたし出して、「あ、あの…」と少し言い難そうに小さな声で映画のタイトルを口にした。


「え?それでいいの?」


結花ちゃんの口から出たのは意外なことに、アクション映画だった。
1作目が大ヒットして、今上映されているのはその2作目。
確かに面白そうだけど……


女の子ってみんな恋愛映画が好きなのかと思ってた。


今までの子達はみんな、例外なく恋愛映画を選んでいた。
恋愛に対して冷めてる俺だから、正直、作り物の恋愛は共感どころか冷めた目で見てしまう。
それでも相手の子が見たいならと付き合って隣に座って見てる振りをしていただけ。


結花ちゃんも恋愛映画が見たいのなら、今回もそうなるだろうと思っていたのに。
彼女が選んだのはアクション映画。


驚いた顔をして結花ちゃんに訊ねた俺に結花ちゃんは、少し恥ずかしそうに頬を染めてコクリと小さく頷いた。


「こういうの見たいなんて可愛くないかもだけど…アクション映画好きだし、男の人もこういうのなら一緒に楽しめるんじゃないかなって…あ、江本くんはアクション映画嫌いだった?」


赤い顔をしてボソボソと呟く結花ちゃんは、最後、急に思いついた顔で焦ったように俺を見上げた。
まだ頬が赤い結花ちゃんが、心配げに俺を見上げる顔が無性に可愛くて、俺は微笑みながら首を振った。


「ううん、俺もアクションもの好きだよ。結花ちゃんと趣味があって嬉しい」


笑顔で俺が言うと、結花ちゃんはポッと頬の色を上気させた。


恋愛映画よりもアクション映画を選ぶ結花ちゃん。
男も…ここは俺もってことなんだろう、一緒実楽しめる方を選ぶ結花ちゃん。


そんな彼女に心が温められた気がした。