エレベーターホールの更に奥。
自動販売機の置かれた場所で、私は重苦しく感じる沈黙に耐えていた。
飾りのように置かれた小さなテーブルと椅子。
テーブルを挟んでエミリちゃんと向き合う形で、薫くんと私は座っていた。


「グズグズするのは性に合わないの。単刀直入に言うわ。結花は薫くんには不釣り合いな子だと思う」


「………は?」


沈黙を破ったのはエミリちゃん。
真っ直ぐに薫くんを見つめて、はっきりとした口調で言い放ったその言葉に、薫くんは思い切り眉を寄せてエミリちゃんを睨むように鋭い瞳で見返した。


私はエミリちゃんに言い返すこともできずに口を噤んで、突然発せられた言葉の意味をグルグルと頭の中で考えていた。


エミリちゃんが私を薫くんとは不釣り合いだと思う理由。


私はごく平凡で何かに秀でているわけでもなく、人目を惹く容姿でもない。
性格だって内向的と思われがちだ。
本当の私はそれほど内向的ではないと思うけれど、仲のいい友達がいない学校ではずっと一人でいるから、そう思われていても仕方がない。


そんな私が薫くんのように誰からも憧れの瞳(め)を向けられるような人と不釣り合いだと言われるのは、当然な意見かもしれない。
今までだって、散々、そういうことは周りの女の子から言われていた。


それでも私は薫くんが好きだし、薫くんも私を選んでくれたんだからと今は小さな自信もある。
それに私は元々、そういう陰口のようなものは気にしない性格だ。
施設で暮らしていることを知ると、誰かしら陰口や見下したような言葉を口にする人はいる。
それを聞いて悲しい気持ちにもなるし、傷つくこともあるけれど、一つ一つを気にしていたら私は生きてはいけない。
だから陰口は気にしないようになった。


薫くんと私の関係を快く思っていない女の子に色々嫌がらせをされても、めげないでいられたのはそういう経験があったからだと思う。