「……いか、結花?」
「え?」
手を私の肩に乗せて、私の顔を覗き込むようにしながら私の名前を呼んでいて、ハッとした私はやっと視線を外すことができた。
「大丈夫?」
「う、うん……大丈夫。ごめんね」
心配そうな声で私を見つめる薫くんに私は誤魔化すように笑って、小さく頷いた。
でもきっと、うまく笑えていない。
また薫くんに心配をかけてしまう……そう思うけれど、どうしても引き攣る頬を緩めることはできなかった。
「結花。父さんを紹介するね。父さん、俺とお付き合いしてくれてる結花さん」
「やぁ!はじめまして。薫がいつもお世話になってるようで。こんな可愛らしいお嬢さんが薫と付き合ってくれてるとは、親として嬉しいね」
「……は、はじめまして。私の方こそいつも薫くんにはお世話をかけてばかりで」
薫くんのお父さんよりもその後ろにいる人の視線が気になって、それを避けるように私は頭を下げながらお父さんに挨拶をした。
「本郷さんもお久しぶりです」
「……あぁ、薫くん。こちらこそご無沙汰していたね」
薫くんがお父さん……おじさまの後ろに立つその人にも声を掛ける。
お久しぶりというその挨拶に私はまた驚いて息を呑んだ。
まさか薫くんとこの人が知り合いだったなんて……
「結花。本郷さんは父さんの会社と取引のある大企業の社長さんなんだ。本郷さん、俺の彼女の結花です」
きっと私のおかしな態度に気付いているだろう薫くんは、それでも何も言わずに私を本郷さんに紹介してくれる。
私は小さく頭を下げるのが精いっぱいで、顔を上げることはできなかった。

