待ち合わせ場所はいつもの駅。
でも今日は改札を出ないで薫くんの乗る電車が来るホームで待っている。
薫くんから連絡があった時刻ちょうどに電車が到着して、私はいつになくソワソワした気持ちで降りてくる人波を少し離れた場所で見ていた。
あ……薫くんだ。
私服姿の薫くんは制服を着ている時とは少し違って、大人っぽくて遠目から見てもかっこよさが増している。
夏休みになって、そんな私服姿の薫くんを何度も見てきたけれど、やっぱりいつ見ても私はドキドキと鼓動を刻んでしまう。
だって、本当にかっこいいんだもん。
私に気付いて笑顔で近づいてきてくれる薫くんを見つめながら、私は心の中で独り言を呟いていた。
「おはよ、結花。待たせてごめんね」
「……おはよう。全然待ってないから大丈夫だよ」
私の目の前でにっこりと笑いかけてくれる薫くんにドキドキは増すばかりで、自然と顔が熱くなるのはいつものこと。
そんな私を見て、薫くんは目を細めて優しく微笑んでくれる。
周りにいる女の子達の視線がこちらに向いている気がするのは、私の気のせいじゃない。
今日も薫くんはたくさんの熱い視線を集めている。
だけどそんな視線をまったく意識することなく、薫くんはいつものように私の手を取って彼の胸元に引き寄せる。
「結花はいつも可愛いけど、今日のワンピースもよく似合っててすごく可愛いね」
引き寄せた私の耳元で囁くようにそんなことを言う薫くんに、私は朝一から顔を真っ赤にしてしまう。
だけどちゃんとこうして私の頑張りを褒めてくれる薫くんがやっぱり大好きだと思う。
薫くんのその一言で、私は今日の自分に少しだけ自信が持てたような気がした。

