僕のonly princess



でも……と、頭の中で吾郎の言葉を反芻しながら思った。


吾郎が今言ったキヨ先生への想いは、俺の結花ちゃんへ寄せる想いと重なるものがある。


俺の感じている想いは、やっぱり“恋”なんだと改めて実感できてホッとしていた。


そっか……こういう気持ちが“好き”って感情なのか。


佐知が言った“初恋”という言葉を思い出して、佐知の言ったことは正しいのかもしれないと思った。


「薫は?薫はあの子に対してどうなの?」


まだ赤い顔でちょっと不貞腐れたように口を尖らせる吾郎は、仕返しとばかりに俺に訊いてくる。
そんな吾郎が可笑しくて、俺はにっこりと笑いかけて答えを返した。


「うん、吾郎と一緒。俺も結花ちゃんといると幸せで心が温かくなるよ」


「だったらさ……」


俺の答えを聞いて、吾郎は不貞腐れた顔から真顔になって、


「迷ってないでさっさと捕まえにいけよ。スマホと睨めっこしてる場合じゃないだろ」


「そうだね……今度は俺が捕まえに行くよ」


小さく、でもはっきりと告げた俺の言葉に、吾郎はニヤリと満足そうに口角を上げた。


「今度、俺にも薫の“初恋”の彼女に会わせてよ」


佐知と同じことを言う吾郎に、俺は笑って頷いた。