僕のonly princess



結花ちゃんと一緒にいると、楽しくて彼女の表情や仕草の一つ一つに自然と笑顔になれた。
心がほっと温かくなって、愛しさが込み上げてくる。


冷めきった心に温もりなんて感じたのは、初めてだった。


佐知へ感じていた感情と結花ちゃんへ感じている感情。
まったく違う種類の感情に思えるそれは、はたしてどちらが“恋”という感情なんだろうか。


吾郎はしばらく不思議そうな顔で俺を見て、ほんのり頬を染めたまま口を開いた。


「“好き”なんて感情は人それぞれだと思うけど、俺はあの人といると幸せで温かい気持ちがする。笑ってる顔を見てると、俺も笑顔になるし、傷ついた顔をしてると守りたくなる。『田代君』って俺の名前を綺麗な声で呼ばれると、無性に触れたくなる……あの人のことを好きだと思うだけで胸がいっぱいになる」


ボソボソと小さな声で顔を真っ赤にする吾郎は、全身でキヨ先生のことを好きだと言っているみたいだった。
だけどそんな吾郎がかっこよく見えて、俺は何だかとても羨ましくなった。


お互いの立場や柵(しがらみ)でまだちゃんと恋人同士にもなれていない二人なのに、吾郎とキヨ先生はきっと心ではちゃんと繋がっている。
自分の想いに何の迷いもない吾郎は、やっぱり太陽みたいで俺には少し眩し過ぎる。


俺もこんな風に結花ちゃんのことを想えているだろうか。