固まって自分の手を見つめる俺に、佐知は優しく諭すように言葉をかけた。
「その結花ちゃんって女の子は、負けないって言ったんでしょ?彼女には立ち向かう勇気があったのよ。薫はそんな彼女を遠ざけるんじゃなくて、その手で守ってあげればいいのよ」
「俺にはそんな資格はないよ……俺の手は穢れてる」
顔を上げられず、自分の手を見つめたままの俺は絞り出すような声で呟いた。
「薫……あなたの恋愛歴は確かに褒められたものじゃないけど、自分の間違いにも愚かさにも気付いて、悔やんだのよね?他の女の子達とは違う気持ちで結花ちゃんと一緒にいたんでしょ?」
コクリと小さく頷く俺を、佐知はふわりとその優しい腕で抱き締めた。
真綿のように優しい佐知の腕に、俺は一欠片も不純な気持ちが湧いてこなかった。
込み上げてくるのは、ホッとした気持ちと安心感。
俺をずっと見も待ってくれていた大切な家族としての佐知への気持ちだった。
「結花ちゃんはきっと強い女の子よ。あなたをこうして救ってくれたんだから。それでも女の子なの。あなたがちゃんと守ってあげなくちゃ。結花ちゃんがあなたのこの手を望んでくれるなら、薫は何があってもそれを手放さずに守らなきゃ。だって……好きなんでしょ?結花ちゃんのこと」
まるで子供に言い聞かせるような言い方だった。
だけど優しいその言葉は俺の中にスッと入ってきて、心の中に溜まっていた重くて硬い塊を溶かしてくれた。

