星の柄が入った大きなスニーカー。

無造作に裾を折り曲げた体操服。

いくつもの教材を持った腕。

着崩したジャージの中のパーカー。


真っ黒で、あちこち跳ねた髪にくしゃりとはめ込まれてるヘッドホンと。

小さな顔に、茶色がかった黒目がちの大きな瞳、いわゆるイケメンの彼は……。




えっと、たしか……。
森崎 葉(もりさきよう)くん。

同じ3年生で……あるいみ有名人だ。



「それ……」

「へ?」



目の前に突然現れた、長身の彼を呆然と眺めていると、森崎くんはヘッドホンを外しながらあたしの手元を見た。


あ!スケッチブック!


「もしかして森崎くんの?」

「うん。 でもなんで知ってるの?」

「へ?」


森崎くんの質問がわからずにパチパチと瞬きをしたあたし。
その手からスッと、スケッチブックは抜き取られた。


「……名前、なんで知ってるの? それとアンタ誰?」

「ああ……」


その事か。

納得して、森崎くんに笑顔を向けた。


「だって、森崎くんって有名人でしょ? いろんなコンテストでたくさん賞とってるって。
あたしは、横山花奈。森崎くんと同じ学年で、2組だよ?」


そう言うと、森崎くんは「ふーん」って興味なさそうにまたヘッドホンを耳にあてた。



あ、あれ?