きれいめのレザーブーツ。
裾を折り曲げた、サルエルパンツ。
いくつもの教材を持った腕。
細身のデニムコート。
真っ黒で、あちこち跳ねた髪にくしゃりとはめ込まれてるヘッドホンと。
小さな顔に、茶色がかった黒目がちの大きな瞳、あの頃と、見違えるほど大人になった彼がそこにいた。
「……もり、さき……くん?」
あたしの足は、その場に張り付いたみたいに、動かなくなった。
目の前の彼が、ほんとに森崎くんなのか。
間違えるはすない。
でも、信じられなくて、まさかって思っちゃって……。
滲んだピンク色の世界に、真っ直ぐに立つ彼が眩しくて……。
聞きたい事は、たくさんある。
伝えたい事だって、たくさんある。
なのに、あたしの口は全然動こうとしてくれなくて。
一歩、また一歩と歩み寄る彼を見つめたまま。
動けずにいた。
そうして、そんなあたしに、彼は言ったんだ。



