「……」
そこには、あの時と同じ。
まるで思い出のままの、満開の桜の木が、誇らしげにその花びらを咲かしていた。
穏やかな春。
ふわふわとあたたかい日差しに誘われて、まるでここは、夢の世界。
あの頃に、タイムスリップしてしまったみたいだ。
ひらひら
はらはら
優しい風に、ピンクの花が舞う。
それは、桜の雨……。
なんて、なんてキレイなんだろう。
それに、なんてかなしいんだろう。
あたしは時間も忘れて見つめていた。
その時だった。
ジャリって砂を踏む音に、ハッとして振り返った。
桜の花びらの雨が、視界を遮って。
その向こうに見えたのは……。



