「よかった!いたッ」

「え……なるみ、さん?」


そこは、頬を真っ赤に火照らせた、なるみちゃんがいた。

驚いて固まっていると、目の前に何かが差し出された。


「これ……」

「え?」


訳がわからずに、なるみちゃんとその手元を交互に見た。

なるみちゃんは、はあっと大きく息を吸い込むと、真っ直ぐにあたしと向き合った。


「ごめんなさい」

「へ?」


ま、ますます訳がわからない……。


目をパチクリさせていると、なるみさんは、俯いてしまった。


「本当は、もっと前に渡すように頼まれてたのに……気持ちの整理が出来なくて、それで……」

「……なるみ、さん……」



やっぱり、なるみちゃんも、森崎くんのこと……。

しばらくの沈黙のあと、意を決したように顔をあげたなるみちゃんはあたしの手を掴んだ。



「早く行って?今日までなの、これ」

「きょ、今日まで?」


そう言われて視線を落とすと、なるみちゃんに握らされていたのは、何かの招待状だった。


手にとってみると、そこには“春の衛圄展”と書かれていた。