大学の入学式を終えたあたしは、ひとりベンチに座ってあっこを待っていた。

まだかなぁ……。


腕時計を確認する。

待ち合わせの時間は、とっくに過ぎている。


と、その時スマホが震えた。



鞄から取り出してみると、それはあっこからで。


サークルの勧誘が凄くて今すぐぬけれそうにないから、カフェで待ってて。
そう書いてあった。


サークルかぁ……。
油絵のサークルとか、あるのかな。


あたしはそんな事を考えながら、あっこに返信する。



「了解っと……」



送信されたのを確認して、それを鞄にしまおうとした、その時だった。
不意に目の前を何かが横切った。




ふわり ふわり


あ、桜の、花だ……


道を挟んだ向かい側に、桜並木がある。
風が、ここにいるあたしのところまで、小さな花びらを運んだのだ。


そっと手をかざすと、それは静かに指の間を零れ落ちる。

それはまるで、手の届かない場所に行ってしまった、あの人のようだと思った。







「横山さんッ!」



……?

突然呼ばれて、振り返った先にいたのは。