声をかけてきたのは
この映画の主演
小倉潤くん


顔が近くて
視線をそらしてしまう


「そ、そうですか?」


なんとか言葉を返す


今日はこの日のために新しく買ったワンピース


髪は巻いてサイドに流した


5歳年上のモト兄に釣り合うように

少しでも可愛く見えるように


「うん。
綺麗だよ。」



100万ドルの微笑みのような輝きをぶつけられ


顔が熱くなる



グイッ

そんな時
モト兄が
強く私を引き寄せた


体制を崩してモト兄の胸に飛び込んでしまう


「もう、映画始まるから。」

そう言って
潤くんを軽く睨む


「ごめん、ごめん。
怒るなって。
りょうちゃん、楽しんでね。」


私は何も返せないまま暗くなる場内で映画に吸い込まれた


モト兄は席を立つまで私の腰に手を絡めたままだった