目の前には
あの…人気女優
小西奈津子


そして
抱きつかれてるのは
若手人気歌手
私の彼氏


週刊誌と同じ…

私の知らない
私の入れない世界


「私…急に来てごめんなさい…。」

涙声の小西奈津子

綺麗な人
涙声が切なくて
高い鈴の音みたいにか弱い


そして
私の存在に気付いて
急に焦りだした


「あ、
やだっ。ご、ごめんなさい。来客中だったなんてっっ!」


そう言いながらも
彼女の目からは涙が伝う


モト兄がゆっくり私を見て口を開いた


「ごめん。
りょう。帰ってくれないか?」


その言葉が私の心を粉々に打ち砕いた


カバンを掴んで
そこから駆け出した



私よりあの人を取るの?


私がいたら邪魔なの?



私は………邪魔なの?




悔しくて


悔しくて


虚しくて


苦しくて



エレベーターの中で泣き崩れた


声をあげて泣いた


泣いても
泣いても
涙は止まってくれない


周りの目なんて気にしてる余裕すらなかった


清々しいはずの朝日が
ぼろぼろの私を
眩しすぎる光で突き刺していた