「そう…か。」


意外そうに
でも安心したかのように
モト兄は言う


言いたい言葉を飲み込んで

私は窒息しそうな心をしまい込んだ


「何で…そんなに離れて座ってるの?」


いつもなら肩の触れ合うくらい近くに座る私


でも
今は
今日はそんなに近くに行きたくない


「え…
気のせいじゃない?」


ごまかしきれない


「気のせいなわけないだろ?もっと、近くに来てよ。」


モト兄に腕を引き寄せられる



〜〜♪

タイミングよくインターホンが鳴った


「誰だ?こんな時間に。」


〜〜♪


モト兄はインターホンを無視するかのように
私に顔を近づける


「イヤッ…!」


私は反射的に顔を伏せてしまった


〜〜♪


インターホンだけが静かな空間に響く


驚いた
傷ついたような顔のモト兄

ズキンズキン


心が痛む


だけど
今はキスしたくない

こんな気持ちのままモト兄に触れたくない


「あ、誰か来てるのに…
急用かもしれないし?」

〜〜♪

モト兄は軽くため息をついて施錠を外した


その瞬間
フワッと香るフローラルの香り


そして
優雅になびく栗色の髪


「基良!!」


そして
彼女はモト兄の胸に飛び込んだ


「奈津子!?」


驚き混じりに言ったモト兄の声が私の心に突き刺さった