「坂本さんは、休日は何をされているんですか?」
数秒の沈黙が耐え切れないかのように佐藤さんはそう僕に聞いた。
「ああ・・読書とか・・そうですね!月に2回ほど、ツーリングに行っています!」
ツーリングと聞いた瞬間、少しだけ佐藤さんはうれしそうな顔をした。
「ツーリングってバイクに乗られるんですか?」
「ええ・・大学時代からバイクに乗っています・・」
「そうですか・・何に??」
「ああ・・ハレーってバイク知っていますか??そいつに乗っています!」
「知っています・・・私も同じバイクに乗っていますから・・良かったら、今度、一緒にツーリングに行きませんか???」
「ええ・・良いですね!ぜひ・・・」
常に・・「今度の・・」言葉の次の言葉には社交辞令がついてくれる・・・
僕はだから・・絶対に今度の次の言葉は信じることはしない。
その後、佐藤さんは楽しそうにツーリングの話を延々と僕に話し続けた・・・
「そろそろお時間ですが・・・」
そう部屋に内戦が入って僕の幻想は終わりを告げた・・
「絶対に連絡をくださいね!ツーリング行きましょう!都合が良い日を連絡してください!楽しみにしていますから・・・」
彼女はそう言いながら僕に背を向けると歩き出した。
僕は、彼女の後姿を見つめていた・・
ずっと・・ずっと・・いつまでも・・・
そして、彼女の後姿が見えなくなった頃、僕はある重大な事に気がついた・・
あっ・・聞いてないや!彼女の携帯番号・・・
まあ・・いっか!どうせ・・・誘っても来るわけがないのだから・・・
佐藤さんたちと合コンをした2週間後の週末、いきなり僕の携帯電話が鳴った・・
着信音は「セイラー服と機関銃」!加藤からの電話である
「坂本・・明日、バイク貸してくれないか??」
そんな加藤の加藤の言葉に僕は一瞬、顔をしかめる・・
「バイク??お前、もう、乗るの辞めたんじゃないのか??」
「ああ・・辞めたんだけど・・実は、明日、ツーリングに行く約束をしてしまってな!」
「女か??相変わらず、忙しいな・・悪いが、無理だ!バイクは貸せない!別に俺じゃなくても、知り合いにいくらでもバイクを持っている奴がいるだろ!そいつに借りてくれよ!お前もわかっていると思うけど・・バイクは生き物だから、一度、他人に貸したりすると・・すねるんだ!すまないな!!」
「ああ・・実は、ハレーじゃないとまずいんだ!国産車なら、いくらでもいるんだが、ハレーを持っているのは、お前だけなんで・・そう、言われるのは解っていたんだがな!悪かったな!」
加藤はそう言いながら電話を切った・・・
それから、2時間後の深夜の1時、再び携帯電話なった!
「誠!今日の8時に用賀の入り口のマックに集合な!ハレーで来いよ!」
加藤はそう一言だけ言うといつものように電話を切ってしまった。