さよならは♪別れの言葉じゃなくて♪  
   再び会うまでの♪遠い約束♪
静寂をかき消すかのように携帯電話の着信音が鳴り響いた・・・
電話の相手はわかっていた。
僕は2台の携帯電話を持っている。
一台は仕事用で朝の9時から6時までなりっぱなしのうるさい奴で・・・
もう一台は、プライベート用で実家の母親とそれと、今、電話を鳴らしている加藤にしか電話番号を教えていない・・・
別に自分の携帯の電話番号を教えるのを避けているわけではない・・・
ただ、僕には電話番号を教える友達が居ないだけなのだ・・
「おう!坂本か!明日の夜、7時にアルタ前な!会費は1万で一応、俺の会社の社員って事になっているから!あんまりダサいスーツで来るなよ!」
加藤はそう言うと僕の都合も聞かずに電話を切ってしまった・・
僕は次の日、会社を退社するとすのまま、新宿に向った。
約束の時間は7時だったが、職業病とでも言うのか?約束の時間の30分前には約束の場所に着いていないと、どうも落ち着かない。
時計を見ると6時半を少しだけ過ぎた頃であった。
アルタの前は待ち合わせの人々で溢れていた。
そんな中、一際、みんなの注目を集めていた独りの女がいた・・
真っ黒な黒い長い髪・・・
そんな黒い髪を引き立たせるような真っ白い肌の美しい女であった。
待ち合わせの男達は、持て余している時間を潰すためにきっと、彼女の待ち人がどんな奴なのか想像をめぐらしていたに違いない。
大体、この手の美人の待ち合わせの相手はうちらが嫉妬するような美男子が、うちらが失笑するよなぶ男と相場は決まっている・・・
僕も何気に彼女の待ち人を想像しながらその美女を見つめていた。
「相変わらず早いわね!今日子!なに!もしかして気合満々って感じなの?」
彼女にそう話しかけて来た女を見て僕をはじめ、その場に居た全ての男達がなんとなくきっと、がっかりしたに違いない・・
なんだ・・女かと・・・
黒髪の女性を清楚な和菓子とたとえるなら、話しかけて来た女性は、色とりどりのクリームでデコレーションされた洋菓子と言う感じだろうか?
派手派手な美女であった・・
「坂本!相変わらずはえ~~~~な!」
そんな二人に見とれていると急に背後から加藤の声がした。
「こいつ同じ海外営業課の山川!もう一人は総務の向井な!」
加藤にそう二人を紹介されて僕は一度だけ頭を下げた・・
「あっ!白川さん!」
山川は僕の存在などまるで気にしてないようにそう叫ぶと歩き出す。
その先には・・なんと、例の和菓子と洋菓子の美人と二人の女性が立つていた。
僕は一瞬、驚きを隠せなかった・・
どうやら、彼女達が今夜の合コンの相手らしい・・・
「店!7時に予約してあるんで行きましょうか!」
山川はそう4人に告げると僕達に手招きをして歩き出した。
「初めまして!山田貿易の山川と申します・・え~~課はですね・・・」
簡単な自己紹介が始まった。
JIS・・・
JISは旅行業界でも最大手の一流企業であった。
加藤が小声で言った・・
坂本・・二度とJISの女なんかと飲めないからな!気合入れて飲めよ!と・・
確かに・・・確かに・・・
「本田純子です!宜しく!」
洋菓子の彼女の名前を本田純子と言った・・・
「一応、営業をやっています!よろしく・・・」
よろしく・・そう言いながら純子は妖艶な眼差しで僕達をみつめた・・・
「佐藤今日子ともうします・・えっ・・部署は・・・」
「あっ!解った!秘書課かなんかでしょ!」
佐藤さんの言葉を妨げるように加藤がそう言った!
「違う!違う!!今日子は経理課よ!それも、課長なんだから!この中で一番の出世頭ってやつね!」
「それはすごいですね!JISの課長職っていったら、たいしたもんです!」
加藤はどうやら、佐藤さん狙いのようである。そういえば・・なんとなく加藤の好きそうなタイプの女であった・・・
合コンが始まると僕は雑用係りに徹するのが何時ものパターンである。
みんなの酒の注文や空いた皿の始末など・・殆ど、女性達と話をする暇が無いほど細々と動き回っていた・・・
合コンが始まって1時間程過ぎた頃、加藤が言った・・
「えっ~実はこの近くに素敵なカラオケボックスがあるのですが・・どうでしょう?今から、カラオケなど・・・」
これも何時ものパターンである。
そして、そんな加藤の言葉を何かの合図かのように、女性人は立ち上がり、全員が化粧直しに向った・・・