笑顔でお礼を言うと

みんな笑ってくれた。

零夜さんは別の意味でめちゃくちゃ喜んでたけど…。

「これで幸子たちを独り占めできるー!」

って。

いやいや、幸子たちは私と一緒に家を出て、

保育園いくんですよー!

って思ったけど、

喜んでるところ釘指すの悪いから黙っておいた。

後々気づいたときかわいそ。

「学校は今日からだよ♪着替えておいで」

おっちゃんがそう言った。


えっ、

今日から…?

「心の準備が…」

って呟いたけど、

みんながにこにこしてたから

なにも言わずに着替えにいくことにした。



着替え終わって食事場に向かう。

部屋のふすまを開けると、

「フゥー!」

とか

「いいねぇ!」

とか色々冷やかしっぽい声が聞こえた。

あ、あと、

「女子高生やぁぁぁぁぁ!」

って。

いやぁ、

制服着ただけで、中身は何ら変わらないんだけどねぇ、

なんて思いつつ、自分の席へ座る。

「いずねぇ!かわいっ!」

美幸が抱きついてきた。

「いずねぇ!似合ってるよ!」

幸子が、美幸をはねのけて抱きついてくる。

「いずねぇ!いずねぇ!」

後ろからぎゅってしてくるコウ。

私は美幸を引き寄せて三人を抱きしめ、

「ありがと!三人もいつも以上にかわいいよっ」

ってお決まりの台詞をはいた。

もちろん、

心の奥底からの言葉ですけどっ!

すごい向こうから

「その手があったか…」

って声がした。

まぁ、誰かは想像つくと思うけど…。

「おい。」

龍之介さんに声をかけられた


「どうしました?」

「お前、時間大丈夫なのか?」

そう言われ、時計を見る。

「学校は9時半に行けばいいんだよー♪」

奈美恵さんが教えてくれた。

9時半…

学校まで大体10分くらい。

あ、でも幸子たちを送っていくから…

少なくとも9時にはここを出なきゃいけなくて…

今は、8時50分

うん。

やばい。

「幸子!美幸!コウ!準備できてる!?」

三人は笑顔で

うん!

とお返事。

うはっ!

お利口すぎる…♡

「あ、私も急がなくちゃね。またあとでね!いずちゃん♪」

奈美恵さんがウインクをして食事場を出ていった。

それに続いて龍之介さんも。

私は急いで片付けをして、準備をする。

まぁ、10分で終わるわけなんかなくて…

倍かかっちゃったよ…

これでも早いほうだと思う…。

はぁ、

転校初日から遅刻かぁ…

なんて萎えながら家を出た。

三人をつれて。

すると、玄関の前に止まってる車。

あれ、この車…

「乗れよ」

運転席から顔を出す龍之介さん。

「仕事はいいんですか?」

「あぁ。転校初日から遅刻したいのか?」

…う゛

「えっとー、じゃあ、お願いします。」

私はこの前みたいに三人を後部座席にのせた。

…あれ。

チャイルドシートがある…

はっとして龍之介さんを見たら

「使えよ。」

耳を赤くしながらそう言った。

「ありがとうございます!!」

私は精一杯お礼をいって、

コウをチャイルドシートにのせた。

「いくぞ。」

「あ、はい。お願いします!」

家を出て五分ほど。

やっぱ早いね、車は。

少し三人が話したくらいですぐついちゃった。

私は三人を預けて、

車に乗った。

幸子たちがいなくなったせいか、

すごい静かになった。