「頑張ったな」

竜はそう言って私の頭をグシャグシャに撫でた。

何を頑張ったのかわからないけど、

なぜかまた、涙が出できた。


急に泣き出した私を見て

戸惑いつつも

抱き締めてくれた。


…あったかい。


「和泉、


俺と付き合わないか…?」



耳元でそう囁いた竜。


…え?


竜、今なんて?


「竜…?」

竜からゆっくりと離れて

顔を見た。


その顔は、真剣そのもので

冗談をいってるようではなかった。


「草薙と付き合ってて、辛いんだろ?

なら、俺と付き合えばいいさ。」


…そうかもしれないね。

辛いよ、

苦しいよ、

でも、でもね、

「…無理だよ。
竜はお兄ちゃんみたいな存在で…

龍之介以外に他の人を好きになるなんて、きっとできないんだよ…」


さっきより増して溢れてくる涙。

「辛いけど、苦しいけど、

一緒にいて、しあわせなの。

好きなの…。」


「…そうか。」


竜はそう言ってうつむいた。


「ごめん、ごめんね、竜…」


何度も謝る私に対して

竜はすこし寂しそうに笑って

「冗談だよ。
俺にとってもお前は妹だよ。
ほら!行ってこい!
別れたくないんだろ?
でも、自分の意思も通したいんだろ?

なら、それを伝えてこい!

あいつならきっと、受け止めてくれるさ。」


竜はそう言って私の背中を押してくれた。


「ありがと、ありがとね、竜。」


いろんな意味で。

ありがとう…。