戻ってきた竜の手のなかには
フランクフルトが。
「ん、」
そう言って渡してきた。
私の大好物。
「あ、ありがと!」
少し驚きながらもありがたく受け取った私には
もうイラつきなんて消えてた。
好物を覚えててくれたっていう嬉しさと
…うん、まぁ、食い気に負けた
っていうのと、ね。
ガツガツと食らいついてると
苦笑いしてる竜が
「聞いたか?」
そう言われて
お行儀が悪い私は口に入れたまま
「まゃみが?(なにが?)」
そう返すも、言葉を理解してくれたみたいで
「あそこの宿で一泊するらしいぜ」
…え。
竜が指差す方向を見る。
宿っていうより、小さいホテルみたいな。
…ってか、そんなことよりね!?
「よ、洋服…!ゴホッ」
驚きすぎて、
フランクフルトを無理矢理口に押し込んだ私は
むせながらも伝えようとは努力した。
けど、言葉にはならなかった
…でもあれだね。
さすがですね、竜さん。
「あ?洋服?おっちゃんがどうにかしてくれるんじゃね?」
…兄様とよばせてくだせぇ
ほんと、これで理解できるあなたは素晴らし過ぎるよ、うん。
…ってことは、お泊まり確実ってことなのかなぁ?
やだなぁ
なんて萎えてたら
海に足を浸からせながら
じーっとこっちを見てくる龍之介さんと目があった。
「…あ。」
不意に声を出した私を不思議そうな目で見てきた竜。
けど、その原因が分かると
小馬鹿にするように笑って
ポンポンと私の頭を撫でた。
…最初はね。
だんだんとその力が強くなる。
いや、殴ってくるって意味じゃなく、
ガシッと掴まれて撫でられる感じ?
効果音で言えばガシガシ。
うん、まぁ、ほんと、
「髪型崩れるでしょうに!」
「…え?どの顔が髪型なんて気にしてるんだ??」
そう、嘲笑うように言ってきた竜
このやろう!!
「この顔だよ!こ・の・か・お!!!」
そう言って顔をぐいっと近づける。
「あ。お前太ったな」
そういってきた竜。
くそうっ!!
「少しふくよかになっただけだわ!」
そう言って離れて頬を膨らませると
「え?なに?デブ?あー、そう」
そう言ってまたからかってくる
「お前なんて一生兄様なんて呼んでやんねぇ!」
そう、さっき心のなかで言ったことを撤回する。
しかも声に出して。
「は?なにいってんの?
お前が妹とか、人生終わるわ!」



