あたしはかつて大恋愛をした。
けど、周りの人はみんなひどい恋愛と言った。
それはあたしが中2だった頃だ。
中2では剣道部に所属し、先鋒だった。
その頃、違う中学の一つ年下の翔くんに恋をしていた。
翔くんは飛び抜けた才能で、一躍有名人になった。
すごく強くて翔くんのおかげで剣道の弱さを知ることができたのだろう。
翔くんはかっこいい。
剣道の最中には一際目立つフォームに、一際目立つ美声。
文句など言えるような人は誰一人いなかった。
そんなある日、あたしは毎年ある合宿に行った。
あたしは翔くんに会える事が嬉しくてその事以外頭になかった。
「奏多さん!」
翔くんと同じ中学のスミレちゃんとサツキちゃんだった。
「あ!スミレちゃん、サツキちゃん。」
「奏多さんっ、会いたかったです。」
2人の中でもよく懐いてくれる、サツキちゃん。
サツキちゃんはすごく男の子っぽいけど、乙女な1面もあってかわいい。
「ありがとう。翔くんは?」
「翔くんはまだ着替えてますよ。」
「そっか、さんきゅ。じゃあ、また後でね。」
スミレちゃんとサツキちゃんにさよならをして、更衣室に向かった。
「奏多?」
同じ中学の中堅、ユウナだった。
「…更衣室行ったら…会えるかなって……」
ユウナは呆れたように言った。
「今日は剣道に集中しなよ。」
「うん。」
ユウナだってきっと喜びを隠せないハズ。ユウナは翔くんと同じ中学の隼人が好きなんだ。
隼人には翔くんと同じ歳の弟がいる。
その弟がまた可愛い。
「ユウナ‼︎」
「スミレ‼︎」
この2人は塾が同じらしく、一つスミレちゃんが下なのに呼び捨てで呼ぶほどだ。
「隼人先輩と付き合う事になったの‼︎」
その言葉を聞いたあたしたちは驚きを隠せなかった。
「…。」
さすがのユウナも驚き、声も出なくなっていた。
「おめでとう‼︎スミレちゃんも幸せになってね!じゃあ、あたしたちは行くね?」
こんな時は助け合って来たあたしたちが今度はあたしが助けるべきだった。
「うん‼︎ばいばい。」
少しまだ興奮気味のスミレちゃんはあたしたちに大きく手を振った。
まだ、ユウナは辛いみたい。
どうすればいいか、あたしにはわからない。
友達として元気を出させるべきか、それとも静かに見守るべきか…。二者による葛藤があたしの中であった。…やはり、後者の方が良いみたいだ。しかし、そんなに続くほどではない。
そんな時に救世主が現れた。
「奏多さん‼︎ユウナさん‼︎」
またまた、サツキちゃんだ。
「サツキちゃん‼︎」
気分が乗らないユウナの腕を強引に引き、サツキちゃんの元へ走った。
「ユウナさん…?大丈夫ですか?」
サツキちゃんは本当にいい子だ。よくわかっている。だけど、こんなサツキちゃんとあたしの想いを知らずか知ってかユウナは全無視をする。
「ユウナね…ちょっとまた後でいいかな?ごめんね?」
「わかりました。失礼します。」
何故かサツキちゃんも少し興奮気味だったような…?何があったのだろう。
「あ‼︎翔くんだ‼︎」
嬉しさのあまり叫んでしまった。
しかし、翔くんはあたしの事など眼中にないので何も気づかなかった。
ユウナに話しかけた。
「ユウナ…隼人くん…好きなの?」
「……好き。」
「そっか…諦めちゃだめだよ?」
「え…応援してくれるの?」
「そりゃね♪ユウナに助けてもらったこといっぱいあるし、ユウナはあたしの大切な友達だもん♪」
「……奏多ぁっ」
この時はまだあたしにユウナ以上の苦しみがくると、誰も想っていなかっただろう。あたしはあの時…なんて考えるほどに涙を誘う。まだ大好きです。