「渡野先輩は頭も良いし、後輩にも優しくて。なにより、バスケがすごく上手かった」
「へー」
「バスケが本当に好きで、よく友達と部活終わったあとでも練習してたんだ。それで去年、渡野先輩がエースで夏の大会で全国大会の切符を手にした。みんな、今年は優勝出来るだろうって思ってた。でも、」
そこで春樹はトーンを落とした。
「準優勝だった?」
「うん、そうなんだ。」
まぁ、バスケでは優勝候補が確実に優勝できるわけではないし、無い話では無い。
「俺は、その大会の日はサッカーの練習試合があって行けなかったんだけど、負けたって聞いて、ただ残念だなーって思ってたんだけど、噂を聞いたんだ」
「…・・・噂?」
そう聞くと、春樹は俯いて言った。
「負けたのは渡野先輩のせいだって。」
「え…」
なんでだ。
「準優勝だったんだけど、優勝校と準優勝校は冬の大会にも出れるらしくて。3年生の先輩たちは引退だけど、冬まで、スタメンの人は出してもらえるはずだったんだ。」
「だった…?」
春樹は悔しそうに顔を歪ませて頷いた。
そして、こう言ったんだ。
「渡野先輩だけ、出なかったんだ。そして、冬の大会では一回戦負けで、先輩たちの中学バスケは終わったんだ。」
「なんで。あいつだけのせいになって、あいつだけ出なかったんだ」

