「そしたら藍ちゃんが男の子と話してるのを見かけてさ」



いつのことだろうか。


見かけたということは、校門の辺りか。



「そしたら、藍ちゃんがその子を励ましてて....。話してる内容聞こえちゃったんだ」



その時は周りに人いなかったしね。

そう付け加えた健二さんに、私は思い当たる節があった。



「彼女にフラれた男の子の背中を叩きながら、前向きな言葉をかける藍ちゃんが」



そこまで言って口を閉ざした。



あれは確か、何ヵ月か前。


仲の良かった男友達が彼女にフラれてへこんでたとき。

いつもみたいな元気がなくて、泣きそうな顔をしていた彼に言ったんだ。



また新しい恋があるよ。
私たちはまだ先があるし、人生これから。

悲しいのは分かるけど、ずっとうじうじしてたらいつまでたっても踏み切れないよ。



そんな感じなことを言った。


彼氏がいるわけでもない、いたわけでもない。
恋愛経験もそんなになかった私が偉そうにかけた言葉。



あれを健二さんは聞いてたのか。



「それ聞いた瞬間、あぁ、そうだよなって思ったんだ。似たような事を友達にも言われたんだけど、そん時はなにも思わなかった」

「............健二さん?」



今度はしっかりと私のほうを向いて、真剣な表情で語る。



「その男の子を元気にしようと励ます姿が綺麗で、俺に言われているような気さえした」