不良さんがじーっとこっを見て....いや、睨んで?きている。
淀みのない綺麗な瞳で私の顔を見つめてくるもんだから、意思に反して赤面する。
「あのさ、折角これ拾ってくれたんだし。お礼する」
....................はい?
うえええええ!?
目ん玉飛び出るくらい驚いた。
周りの女の子や美和ちゃんだってさぞかし驚いていることだろう。
たってあの不良さんだよ!?
泣く子も黙る不良さんだよ!?
悪名ばかり高くて、まさに黒という色が似合いそうな美形だよ。
その不良さんが私にお礼をしたいですと!?
たかが生徒手帳拾っただけなのに....。
開いた口が塞がらないという言葉は今の私を表すのに十分だろう。
「で、お礼の品なんだが.......。そうだな、家にあるからお前車乗れ」
ビシッと、執事さんが立っているほうを指差して命令した。
どことなく執事さんの目が見開いている。
私はハッとして、手をぶんぶんと胸の前で振って拒否した。
「そんなっ、滅相もない!お礼なんていいですよ!」
女子からの視線も痛いんですよっ!
あの「だったら私が拾いたかった」「なんであんな女が」っていう感じの恐ろしい目を!
食おうとした魚に逃げられた鮫のようですよ。
「は?なに、お前。俺が礼してやるっつってんのに断ろうってか?」
「えっ!私はそんな........」
違います!と涙目で否定しようとしたら後ろから両肩をポンッと叩かれた。



