校門から1歩踏み出すと、間近に執事さんの姿が。

なんと格好いいことだろうか。


私たちと同じく、校門を出る女子生徒が執事さんをガン見している。

それもそうだろう。執事さんの顔とルックスはそこらのヤンキーなんかよりずっとイケてる。

不良さんとその彼女さん、執事さんに、たまに不良さんに会いに訪れるカラクの人たちを見ると美形が勢ぞろい。


男子からは恐れられているものの、女子からは憧れだとかお話してみたいだとか、そういった目線で見られてる。



カラク=美形という方程式がさも当たり前のようだ。




執事さんの金に染められている髪がゆらゆらと揺れて、カラコンを入れている青い目と私の目が合った。



「藍、執事サンあんたのこと見てない?」

「.....う、うん」



いやしかし自惚れてはいけない。

私の横や後ろを見てみると、キャッキャと嬉しそうにしている可愛い女の子たちがたくさんいた。その中で私が見られてたなんて.....ありえる?


ないな。


そう思うとちょっとだけ肩が下がった。



校門で美和と立ち止まり、不良さんが車に乗って執事さんたちが去るのを待つ。

これがもう日課になっている。



周りには不良さんと執事さん目当てで、私たちと同じように立ち止まっている女子生徒がたくさんいる。

私と美和ちゃんもその中の2人だと思えば恥ずかしいなんて思わずに、堂々と立ち止まることができる。



「もうそろそろだねー」

「うん....もう帰っちゃうのか」



明日は土曜日でお休みなので、執事さんには会えない。

視線を不良さんにやりながら、もうちょっとだけゆっくりとした歩調で車まで進んでほしいなあ、と我侭を思ってみたり。



「あ、藍あれ」



美和ちゃんが私の制服の袖を摘み、囁くように地面に落ちている灰色のモノを指差した。



「なんだろ....」

「さっき矢野口のポッケから落ちてたよ。多分生徒手帳か何かだと思うけど」

「え!?」



不良さんはその生徒手帳に気づくことなく前を向いて執事さんのほうへ向かっている。



「藍、拾ってやりなよ」



コソッと耳うちする美和ちゃん。
私はその言葉に頭が真っ白になった、ような気がした。





え、え!?