私を一言で例えるとするならば、地味である。


顔はそこそこ身長もそこそこ頭もそこそこ運動神経もそこそこ。苗字なんて田中である。


そんなザ・平均の私だが、これでも大層な恋をしている。

恋は恋だろ、大層な恋ってどんな恋だよ。とこの前友人につっこまれたが、私が片想いしている相手が大層な男の人なのだ。



私の通っている中学の同学年男子に、矢野口涼という怖い不良がいる。

なんでも、カラクというこの辺りじゃ有名な暴走族の頭で、彼女に手を出してきた男を何人も病院送りにしている不良さん。




そして、私が好きになったのはその不良さん____ではなく、不良さんを送り迎えに来ている運転手さんである。


赤い車で毎日迎えに来て笑顔でドアを開けている、執事さんみたいな男の人。


でも見た目はやっぱり怖い。ド金髪に染められた髪とキラキラ光っているピアスにカラコン。


私が最も苦手な見た目だった。





けど____





「執事さんが矢野口くんに話しかけてる姿に惚れたとか、何度聞いても笑える」

「ちょっと、美和ちゃん!?失礼なこと言わないでよ!」



友人の美和ちゃんがハッと鼻で笑い飛ばした。


ベンチに座って野球部を見ている私と美和ちゃんは、私の恋愛についてお話していた。



「だってさ、執事さんが他の女に優しくしてる姿を見て、そのギャップに惚れたとかなら分かるけどさー。男に話しかけてるとこを好きになったとか」

「きっかけはどうだっていいんだよ!私は執事さんが好きなんだから」



今日は不良さんが生徒指導を受けている。あの不良さんが素直に生徒指導を受けるなんて...と驚きを隠せなかったが、なんでも彼女さんに「賭けに負けた罰ね」と言われてしぶしぶ行っているとか。


なので執事さんのお迎えはまだまだということだ。


執事さんが不良さんを迎えに来た頃合を見計らって校門を出よう作戦は、惚れた日から決行中である。



「でもさ、いつまで執事さん呼ばわりなわけ?」

「だって名前が分からないんだもん」

「矢野口くんに聞けばいいじゃん」

「バッカ!この前の噂知らないの!?」

「は?」



こいつはなんてやつだ。あの噂も知らんだと?
私は雷に打たれたような衝撃を受けた.......気もしなくはない。



「私と同じように、執事さんを好きになったチャラい系の女子が名前教えてもらうために、不良さんに聞きに行ったんだよ」

「ふむふむ」



この噂けっこう広がってるんだけどな...。その女子生徒、同じようなチャラめの男子からめちゃくちゃ人気あるし。



「そうしたら不良さんが”お前みたいな尻軽女はすぐ他のメンバーにも擦り寄りそうだし、嫌に決まってんだろ”って言ったんだって」

「うはー、言うね」



尻軽女、って言葉がイマイチ理解できなかったから家で検索してみると、納得。



「あ、そろそろ時間じゃない?」

「お、本当だ」