ヒューーーっと風が吹き、謎の沈黙が流れる。


その辺にでも広告のビラが舞っていたら、さもドラマかのよう。


私の、ちょこんと結んでいる髪がチロチロと揺れた。



「巻野さん......好きな人いたんですね」



特におかしいことではない。

巻野さんみたいな好青年で人当たりの良さそうな男性に、彼女がいないことが不思議なくらいだから。



それにこの年齢だもん。


恋愛のひとつやふたつ、したい年頃だし。



私が巻野さんを好きなように、巻野さんだって好きな人がいる。



その予想はしてたし、巻野さんの恋愛が気にならなかったわけじゃない。



でも、やっぱり...。


本人から直接言われるとへこむなあ。



「な、七恵ちゃん?」

「...はい」



あぁ、だめ。巻野さんの顔なんて見れない。

私今すごく情けない顔してる。



「七恵ちゃんは彼氏とか、好きな人いないの?」

「彼氏はいないですけど、す、好きな人は......います」



貴方です。

って言えない。



「ふ、ふうん。いるのか......そうだよな...」



妙に歯切れが悪いけど。



だんだん外は寒くなった。
明日にでもマフラーがいるかもしれない。










「その、好きな人ってどんな人?」