「あー...晴夏さん?」



頭をかきながらその人の名前を言う。


ズキッと胸がいたんだのは、それだけ巻野さんのことが好きだからだ。



「晴夏さんは、俺の______」




彼女。


その答えだけは聞きたくない。


巻野さんの顔は見れず、地面に視線を落とした。






「大切な人だよ」






はにかみながら嬉しそうに出した言葉に、私は少なからずショックを受けた。




でも、大切な人って、彼女ってこと?
でもそれなら彼女ってきちんと言うよね。


もしかして、私の気持ちを知ってるの?


だから私を傷つけないようにそんな風に言うの?



それだったら私は巻野さんを許さない。


好きだけど.....好きだからこそ、私のことを気遣って、優しく遠回しに言われるのは嫌だ。



鞄を持つ手に力がこもる。



「あっ、別に彼女とかじゃないよ!?」

「............えっ」

「俺の友達の彼女。そんで俺らの大切な人」



彼女、じゃない...。


そっか。


でも、俺ら?

巻野さんって、たまによく分からない時があるなあ。






「それに俺、好きな子いるし」