「いらっしゃいませー。120円になります」



こっちにニコッと笑みをくれた。

はうっ!


しかも間近で見ると思いの外背が高い。
巻野さんは175cmくらいで私は165cm。

10cmの差がある。



私は財布から小銭を取り出した。



「君よく来てくれる子だよね?」



......?

わ、私に話しかけてるのかな。


今、このコンビニは私以外に見当たらない。



「え、あ、はい」

「1ヶ月前から来てくれてるよねー!高校生?」

「あっ、高校1年生です」



え、え、え?

あの巻野さんとお話できてる!?



「あ、じゃあ俺とタメか!どこの高校?」

「わっ、私は東高校です」

「うわっ、頭良いとこじゃーん。俺は西校。あのバカな高校だよー」



あははは、と楽しそうに笑う巻野さんに私は感動でいっぱいだった。


巻野さんが話しかけてくれた、巻野さんが私のことを聞いてくれた、巻野さんが私に笑ってくれてる。



そして私は、勇気を出して今度はこちらから聞いてみた。



「あのっ、なんで私がここに来てるって......」



この質問をして、あっとなった。

なんでここに来ているのを知ってるか、って、そんなの1ヶ月も通ってたら普通気づくよ!


あー、もう。失敗。こういうときにコミュニケーション力がいるんだよね...。

とほほ...。


しかし、巻野さんはそんな私に対してきちんと答えてくれた。



「いやー、本当は君が来たとき既に覚えたんだよねー」

「え!?」



そ、それってどういう。



「だってその髪型印象的だったし!短い髪をちょこんと両サイドで結んでるやつ。可愛いなあ、と思って」



かかかかか可愛い!?

よ、よかった...私この髪型にしててよかった!


テニス部だし、髪が短くても邪魔だから無理にでも結んでいる。

これがまさか目印になっていたとは。


髪型グッジョブッ!



「君、名前は?」

「坂下七恵です!あの、巻野さんのお名前は.....」

「巻野正那」

「せいな?」

「そ。女の子みたいな響きでしょ」



ひ、否定はしません。