「私はそんなことをする男の神経が分からない」

「婚姻届を残したり、結婚してくれって手紙を渡したことか」

「そう。彼女のことを想ってるならさ、彼女のためにもそんなものを残すもんじゃないと思うんだよな」



そう言い終わったタイミングで「おまたせしました」とパンケーキが運ばれてきた。

嬉しそうにもらう晴夏に顔が緩む。

こういうときだけ良い顔するよなあ。甘いものときだけさー。



「むっ、これ美味い....。あ、そうそう。続きね」

「.....おう」



またここ連れてこよ。



「あの映画の主人公は自己満足だろ。彼女のことを考えてない。もしこれから先彼女に好きな人ができたら?そのとき、死んだ彼氏のことが邪魔になってくる。死んだ彼氏は彼女と結婚することを望んでたんだぞ。彼女にとっては邪魔なだけー」



シリアスな雰囲気なはずなのに、晴夏のパンケーキ食べる姿で台無し。


だって見ろよ、あの可愛い顔。
ウチの彼女が世界1じゃね?勝てる奴いないんじゃね?


もう本当可愛い。
美味しそうに食べちゃって。


表情をあからさまに出さないのは、プライドのためか、キャラを守ってるからか。



「で、私が言いたいのは。ゴクン。あんな奴は彼氏失格ってこと」








彼氏失格___。







その言葉を聞いた瞬間、俺は固まった。




その言葉、俺に言ってんじゃねえだろうな。


口元をヒクヒクとひきつらせていると、それを察した晴夏が有難い言葉をくれた。



「実際、涼が私にそんなことしても大丈夫。そのまま好きな人の胸に飛び込んでいくから」



フォローのつもりなのか。..........複雑だ。