「それってどういうことだよ」
と、その前にまず。こいつ映画についてあれこれ議論とかする奴だったか?
むしろ恋愛映画すら興味なさそうなのに。
じゃあなんでこいつを誘ったのか、って話になるから口に出して言えないが。
「あ、このパンケーキください」
メニューを取り出して通りすがった店員に声をかける晴夏。
もうパフェ食べたのかよ。
パンケーキを頼む表情がどことなく嬉しそう。
「あ、で。どうなんだ?」
頼み終えるとキリッと顔を元に戻し、水を一口飲んだ。
可愛いやつ。
「いや、言ってる意味が理解できないんだが」
ぶっちゃけ、恋愛について語りたくないってのが本音だがそれを表に出すと嫌われそう。
なんか俺、言いたくても言えないやつになってねえか?
「私が言ったことを理解できないなんてお前どんだけ馬鹿なんだよ」
「あん?お前よりは頭良いぞ」
「だったらはやく答えろ」
「.............」
晴夏よりは頭良い。これは揺るぎのない事実。
天地がひっくり返っても、こいつが俺より上にいくことはない。
それくらい差がある。
なのになんだ。俺がこいつの出した質問に答えられないなんて。
一生の不覚かもしれん。
そんなことを悶々と考えていると、痺れを切らしたかのようにため息を吐かれた。
ちょっとムカッ。
「じゃあさ、その手紙を読んだ彼女はどういう反応すると思う?」
「どういうって......泣くんじゃねえの?」
「婚姻届まで入ってたら、どうすると思う?」
「役所に持ってくだろ」
ん?
あれ?
死んだ男と結婚なんて法律上できるのか?
ふとそんな疑問が浮かんだが、どうせ映画の中だしなと思い、疑問を消し去った。
俺はもう一口だけコーヒーを啜り、頼んだのに一度も手をつけていなかったポテトを口にした。
「なんで持っていくの?」
「そりゃあ、好きな男と結婚したいからだろ」
「死んでるのに?気が変わってほかに好きな人ができたらどうするんだ?」
「え....って!なんで俺が女目線で答えてんだよ!女の気持ちなんて知るかっ!!」
全く、と呟いて何気なく外を眺めてみる。
「なんかさ、重くない?」
チラッと晴夏のほうを向くと、ウザそうにしていた。
な、なんだよ。
「重いって....人それぞれだろ」
とか言ってみるが、内心不安になってきた。
やべっ、俺って結構重いんじゃねえの?
束縛....は、そこまでだが。でも他の野郎と一緒にいると引き裂きたくなる。
これは普通だよな。そこらへんの奴と変わんねえよな。
晴夏って重いの嫌いだったっけ?いや、確かにそうだよな。
こいつの性格知ってる奴なら皆そう言うよな。重いの嫌そう、とか思うよな。
ま、まあ大丈夫か。
その辺の男より顔も頭も良い俺だが、束縛の強さとかは一緒のはずだ。
これが普通だよ、うん。
あれ、そもそも普通ってなんだったっけか。
グルグルと頭ん中でそんなことが浮かんでくる。
そんな俺の心情を知ってか知らずか、恐らく後者だが、話を続ける。



