ガラララッ



シャッターの開く音がした。



外から光が差し込み、暗い空間に慣れていた目が眩む。



シャッターの音で双子もピタリと喧嘩を止め、眩しいほうに目をやる。



「.......こんにちは」



そこには天使がいた。


なんてのは半分冗談で。
神々しいオーラを纏っているような女の子が立っていた。



「涼の彼女だ」



呟いた私の言葉に、メンバーは目をギョッとさせて晴夏ちゃんを凝視する。


初めて見る輩も多いだろう。


晴夏ちゃんは注目されている。そのたくさんの視線が鬱陶しかったのか、眉間にしわを寄せる。


ロゴの入った白い服にデニムのスカートを履いている姿が天使に見えた。



「涼に言われてあいさつに来たんだけど」



車庫を見渡した晴夏ちゃんは、なにを思ったか「へえ」と感嘆していた。

なにか興味惹かれるものでもあったのだろうか。この車庫に。



「あ、はい。えーと......俺らカラクです。宜しくっす」



巻野がペコリとお辞儀しながら挨拶した。

おおお、こいつお辞儀なんてできたのか。



「涼の彼女の、佐々原晴夏です。よろしく」



凛として崩れない表情。
私でも思わず見とれてしまったのだから、ここにいる野郎共の大半は惚れただろう。



「って、ちょっとあんたらなに顔赤くしてんの?」



奏太と響太は惚れてないだろうな、と思い振り向くと、頬を赤く染めていた。



「あっ、ちが!僕は華ちゃんだけだからね!?奏太は惚れたかもしれないけど僕は違うから!」

「赤くなってたよね」

「それはあれだよ。華ちゃんが可愛すぎて____」

「俺も違うから!まあ、美人だなあとは思ったけど......。華のほうがイケてるぜ!」



言い訳して私の機嫌を良くしようと頑張ってるこいつらに腹が立ってきた。



「クス」

「「「?」」」



見ると、晴夏ちゃんがくすくす笑っていた。



「なるほど。逆ハーレムってやつか」



私と大神兄弟を交互に眺めながら確信を持った声色で言った。

なんだろ。女としての敗北感が半端ない。
微笑したらそれこそ天使みたい.....。



「なんだよ。悪いか?」

「別に」

「君に否定されたくないんだけど」



先程とはうって変わって豹変した。
周りの目は気にしないと言っても、さすがに否定されたらムカつく、って感じか。

私もちょっとムッときた。

でもそこまでイラつかないのは、晴夏ちゃんの言った言葉に嫌味や蔑むようなものが含まれてないからかもしれない。



「いいんじゃないの?逆ハーレム」

「あぁ?」

「一妻多夫も、アリかもね。じゃあ私これから行く所があるから。皆さん、これから仲良くしてください」



それだけ言って立ち去った。
シャッターが閉まった音を合図に溜まり場は騒がしくなった。



「......変なやつ」
「僕も、美人だったからどんな性格かと思ったけど....」



奏太と響太はちょっぴり嬉しそう。




そして、あの言葉に嘘はなかった。

今まで否定しかされなかったからか、なんだか新鮮な感じがした。


あの子とは仲良くなれそうだ。










(「あいつらどうだった?」)
(「あの3人とは仲良くなれそう。面白い人たち」)
(「ならよかった」)