「華は共有物だろうが」

「私、物じゃないけど」



共有物って.....。
呆れる私はさて置いて、奏太と響太がいがみ合う。


そんな独占欲剥き出して....、束縛って嫌いじゃないけど喧嘩されるのは困る。


ふむ、どうしたものか。



「って、ちょっと!何気に華ちゃんの首筋に顔うめないでよ!汚れるでしょ!?」

「あんだと!?お前こそくっついてんじゃねえよ!」

「僕が最初だったもーん!」

「関係ねえよ」



普段は仲の良い双子なんだけど、喧嘩すると面倒くさい。


私のために争わないでー!とか言いたくなる。



「大体ね、将来華ちゃんは僕と結婚する予定なんだから!」

「はあ!?お前は愛人止まりだろ」

「くあーーっ!奏太と顔は同じだけど、性格は僕のほうが何倍もいいもんね!華ちゃんだって僕の性格のほうが好きだと思うし」



それはその通りなのだが。


私を挟んで口論している双子を鎮める術は私にはない。
彼女だからってそういうのを期待してんじゃないわよ、巻野。


溜め息を吐きたいけど、2人の勢いがすごすぎて息が詰まる。

誰か止めてくれないかな。



ヒートアップするとほんとにやばいよ。



この前なんて、通りすがった学生に奏太が八つ当たりしてたし。

響太なんて、女の子使って奏太をそそのかそうと企んでたし。


ロクな双子じゃないわよ。



「はーなーれーて!」

「お前が離れろ」

「もう!!今度僕のお友達に頼んで奏太のこと襲わせるよ!」

「おまっ!冗談じゃねえよ、そのせいでこの前酷い目に合ったんだぞ!」



お互いに手が出そうなほど増してきた勢い。



巻野は遠目でびくびくしてるし。
チッ、頼りない。


さすがの私も八つ当たりなんてごめんだし、響太は私の言うこと聞くとしても奏太は無理。

今だってかっこいい顔を歪ませて、どこぞのヤンキーみたくなっている。


おー、怖い!



だ、誰かこの状況をなんとかしてくれないかね。



「僕の邪魔するなら、潰すよ?二度と華ちゃんに近づけれないようにしてやるっ」

「やってみろや。家から追い出してやるっ」



立ち上がって怖い顔をしながら言い争っている双子。


私はそろりそろりと、シャッターの前まで四つん這いで逃げる。