「そんなことないよ」

「あるよ……」



また俯いてぼそぼそと喋る。



「それに、安藤の好きな子は私と真逆だったろ」



確かに、安藤さんの言っていた子は女の子の模範みたいな感じだった。皆に好かれそうな子。

でも晴夏ちゃんは、もちろん好かれてもいるけれど、どちらかというと憧れが強い。
憧れ、尊敬、羨望…。そういった感情が沸いてくる。



「それにサヤカだって魅力的だろ。大事な時は自分の意思を通すし、一途」



我が儘、とも言うけれど……。



「十人十色や千差万別って、この前国語の授業でも習っただろ?」

「うん……」

「ナンバーワンよりも、オンリーワンになれってな」



そう言ってガードレールから飛び降りて私の横に着地した。


スカートがふわりと靡いて、黒髪もサラッと靡いた。


うわーっ、美人だ……。



「サヤカにはサヤカの良いところがある。他の誰にもない良いところ。人と比較するなとは言わねえけど、自分の長所も大事にしろよ」



……........晴夏ちゃんって、なんでこんなに凄いんだろうか。


真っ直ぐで、輝いてて。
バックに夕日もあってか、今までの晴夏ちゃんの中で一番輝いてる。


私には無い光。傍にいたくなるような、ずっと一緒に歩みたいような。


晴夏ちゃんの励ましの言葉にうるっ、ときた。
感動して涙がでそう。


こんな人が私の親友だ____。



「好きな人の理想になりたいっていう気持ちも分からなくないが、染まりすぎてオンリーワンを忘れるなよ」



ぽん、と肩を軽く叩かれた。



「ん?どうしたサヤカ」



なかなか話さない私を見兼ねて顔を近づける。



「サヤカ?」

「私も……」

「ん?」



オンリーワン……。



「晴夏ちゃんのようなオンリーワンになる!」



晴夏ちゃんみたいなオンリーワン。

変な言葉だけど、私と晴夏ちゃんは理解できる。
これがどういう意味なのか。



「そうか」

「うん!」



晴夏ちゃんが輝いてた帰り道。
私に勇気をくれた帰り道。
人間としての目標を決めた帰り道。



「まあ、頑張れ」

「うんっ!」



私はこの帰り道を一生忘れないだろう。









「(晴夏ちゃんのようなオンリーワンになる、ね……。なるってとこがサヤカの良いところ)」

「(私の心の友はずっと晴夏ちゃんだ!)」